更新日:2020年9月28日

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やまがた森林ノミクス座談会

森林資源を活用して地方創生のモデルに

豊かな森林資源を「森のエネルギー」「森の恵み」として活用することで、雇用を創出し、地域の活性化を目指す山形県の「やまがた森林(モリ)ノミクス」がスタートして3年目。さまざまな取り組みが実を結び始め、地方創生の妙手として全国知事会から優秀政策に選ばれるなど全国から注目を集めています。森林資源を活用した地域活性化策「森林ノミクス」をさらに進めていくためには、今後どのような展開が必要でしょうか。吉村美栄子知事と、「やまがた森林ノミクス」に関わる方々が意見を交換しました。

語り合った方々

  • 吉村美栄子氏(山形県知事)
  • 柴田洋雄氏(やまがた森林ノミクス推進懇話会会長)
  • 佐藤景一郎氏(山形県森林組合連合会代表理事会長)
  • 阿部 昭氏(山形県木材産業協同組合理事長)
  • 大泉みどり氏(山形県建築士会理事)

司会/山形新聞論説委員長 小林裕明

やまがた森林ノミクス座談者

育て、使い、再び育てる つくろう循環システム

「森林ノミクス」が目指すもの

― 「やまがた森林ノミクス」とは、どのような取り組みですか。

吉村 「やまがた森林ノミクス」は、地域の豊かな森林資源を「森のエネルギー」「森の恵み」として活用し、地域を元気にしていこうとする取り組みです。山形県は県土の72%が森林で、森林には木材の供給はもとより、美しい自然景観の形成や水源の涵養(かんよう)、災害や地球温暖化の防止、人々への癒やし効果など、多面的な機能があります。戦後植林された人工林が利用に適した時期を迎えています。「育てる」ことに主眼を置いたこれまでの林業から「使う」ことに軸足を移し、木を植えて育て収穫する「川上」から、製材、加工などの「川中」、建材や木質バイオマスエネルギーなどとして活用する「川下」までを一体的に捉えた「緑の循環システム」を構築し地域活性化を目指すのが「やまがた森林ノミクス」です。 平成25年、県内全35の市町村長と一緒に「森林ノミクス宣言」を行って以降、さまざまな施策を展開してきました。「森林ノミクス」は地方創生の要の一つと位置付けており、今年度全国知事会の優秀政策に、約3400件の政策の中から林業関係で唯一選ばれています。

― 「やまがた森林ノミクス」の取り組みについて、どのような思いを抱いていますか。

柴田 山形県の持つ一番の資源は「木」であると考えており、それを活用した地域活性化に期待しています。「森林ノミクス」を進めるには、県民一人一人が森林資源の活用について関心を持つことが大切です。いろいろな立場の県民や事業者が連携する「県民総参加」のモデルをいかに構築するかが鍵を握ります。木材は植えてから利用できるまで60~70年かかることから、森林資源を循環させ持続的な利用をするためには長期的な視野で考えることも大切です。

再造林、県が費用を助成 需要増、安定供給へ全力

緑の循環システム どうつくる

― 「川上」に当たる、森林の整備や安定的な木材生産について、どのような取り組みを行っていますか。

吉村 森林資源を持続的に利用するには、利用期を迎えた木材を伐採するとともに、再び植林する「再造林」を行わなければなりません。木材価格の低迷もあって、再造林がなかなか進まない状況の中で、県は費用を助成して再造林率を向上させています。また、間伐作業などの効率化を図るため、林道整備や高性能林業機械の導入に対して助成するなど、市町村と連携しながら森林整備に取り組んでいます。

佐藤 県内で利用可能な木材資源は1億立方メートルと膨大です。安定的な供給には課題もありますが、改善を図り、低コスト化を進めながら林業の基盤強化に努めています。また、若い人材の確保、魅力ある職場づくりも進めています。最近、森林所有者の中に、自分の山のこれからについて森林組合に相談される方が多くなりました。「森林ノミクス」という言葉がきっかけとなり、山に再び目を向ける人が増えてきたことは良いことです。

― 加工や流通の拡大・推進についてはいかがですか。

吉村 県産木材の新たな需要先として、新庄市に進出する集成材工場のほか、木質バイオマス発電所が2カ所で稼働しており、さらに複数の整備計画があります。需要増に対応した安定供給の体制づくりが急務です。また、県内企業では、スギ材を圧密加工して家具に使ったり、木材を耐火構造部材として活用したり、工業技術を用いた木製玩具の製作など、森林資源を起点とするイノベーションが始まっています。林業と工業による「林工連携」をさらに進め、雇用の拡大に努めてまいります。

阿部 県木材産業協同組合は県内160社が加盟し、木材の需要拡大・消費拡大に向けた幅広い活動を行っています。近年、住宅の新築件数が低迷し、木材の需要も頭打ちになっているため、木工品のプロダクトコンペなど、木材をより身近に感じてもらえるような取り組みに力を入れています。木材加工の先端的な現場を巡るバスツアーは好評でした。こうした「森林ノミクス」を考えるきっかけづくりを継続し、木材の利用拡大を図りたいと考えています。

― 豊かな森林資源も、使われなければ循環利用ができません。

吉村 県は、県産木材を使った家を新築する際に一定額を補助したり、住宅ローンの金利の一部を支援するなど、県産木材の利用拡大に向けた事業を実施しています。建築業は関連産業の裾野が広いので、地域経済の活性化、雇用拡大につながります。「森林ノミクス」は山間部だけの取り組みではありません。「県民総参加」で森林資源を利活用する機運を高めるためには、森林環境教育を通し、森林が多くの大切な機能を果たしていることを広く知ってもらうことが大事です。

新たな活用法、次々開発 人材、女性の活躍も期待

県民総参加 実現へ 理解を広げよう

― 建築業界の役割は。

大泉 女性建築士の有志が「女性すまいネット@山形(通称・みらいえ~る)」を立ち上げ、活動を通して連携の輪を広げています。「木のある暮らし」のぬくもりや心地よさ、まきストーブのやんわりとした暖かさ、地球温暖化防止に貢献するメリットなど、材料、資源としての木材の良さを幅広く知ってもらい、利用拡大につなげていきたいと思います。こうしたことは、未来を担う子どもたちのための投資でもあると考えています。

― 「森林ノミクス」を担う人材の育成も欠かせません。

吉村 この春、県立農業大学校を「農林大学校」に改組し、林業経営学科を新設しました。初年度は県外出身者を含む15人が入学し、林業の知識や技能、国家資格の取得を目指して精力的に学んでいます。林業の潜在的魅力を引き出し、若い人たちが憧れる職業になるよう、人材の面でも好循環を生み出していきます。柴田 女性の力に期待しています。「優しさ」を持つ素材である木材を、女性の目で考えると、人に優しいものづくりができると思っています。大型の林業機械のオペレーターなど、活躍の場が広がれば、さらに望ましいと思っています。

緑の循環システムのイメージ図

(編集・構成 株式会社山形新聞社)

お問い合わせ

農林水産部森林ノミクス推進課 

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電話番号:023-630-2519

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