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更新日:2021年1月7日

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「山形の農林水産業の最前線に訊く」インタビュー第1弾(清水寅さん、天童市)

 この度、農林水産部Facebookでは、農林水産業の現場で働く方にクローズアップし、生産・販売における苦労も含めた農林水産業の魅力ややりがいをお聞きする、インタビュー企画を始めることにしました!

 第一弾は、天童市にて(株)ねぎびとカンパニーを経営されている清水 寅(つよし)さんです。

 長崎県出身の清水さんは、Iターンにより山形で新規就農してネギ栽培を開始。甘くて太い「寅ちゃん葱」の生産や加工品の販売など、ブランディングや6次産業化の取組みを行い、令和元年度の山形県ベストアグリ賞(農林水産大臣賞)を受賞されています。

 長崎県出身の清水さんが山形で就農したきっかけから、農業のやりがい・魅力、そして社員教育のポイントに至るまで、多岐にわたるお話を聞かせていただきましたので、ぜひご覧ください!

《プロフィール》021127001

 清水寅(しみずつよし)

 1980年、長崎県生まれ。

 地元高校を卒業後、金融系の会社に就職し、様々な会社経営を

経験。

 2011年に天童市でネギ農家を始め、2014年にねぎびとカンパニー(株)を設立。

 2019年に山形県ベストアグリ賞受賞。

 

第1回掲載分 第2回掲載分 第3回掲載分 第4回掲載分 第5回掲載分 未公開分

第1回掲載分【ゼロからの~面積日本一達成から味の世界の追求へ~】

−就農のきっかけを教えてください。

「自分の場合は、前に会社経営をしていました。新しい何かを始めてみたいと思っていたときに、妻の親戚から『農業をやってみないか』と言われたのがきっかけです」

−奥様が天童市出身なんですよね。

「それまで農業をやったことはありませんでしたが、当時は自信があるので何でも出来ると思っていました。始めるに当たって決めていたのは、3年で日本一になれなければやめよう、ということ。3年で無理なら、向いていないと一緒だな、と思ったんです」

−やったことがない農業を始めるときに、どんなことを考えていましたか。

「農業は、他に比べて進みすぎていない業態だと考えていました。例えば家電販売業界では、今から始めても多分一番になれないかな、と(笑)。一番になるのが好きなので、一番になれそうな、そういう業態に感じたんです。

 また、農業のことを全く知らなかったので、改革できることが沢山あるんじゃないか、と思ったんです。昔から仕組みづくりとか業務改革が好きなので」

−ゼロからのスタートで、品目にネギを選んだ理由を教えてください。

「例えば、さくらんぼやラ・フランスなどの果樹では、名人がいるので勝てる気がしませんでした。また、米や大豆は、面積で北海道に敵わないし、設備投資が追いつかない。あとは自動化が進んでるものもライバルが多いのでやめました。親を継ぐ形ならいいのかもしれませんけどね。

 そんな中で、ネギは、他の品目と比べて味の違いが分かりにくいんじゃないか、と思ったんです。さくらんぼだったら品種によって全然味が違いますが、ネギはそうではないのかなと。その上で、自分が自信を持っているのは従業員を動かすこと。人を動かすのがもともと得意なので、味で攻めるのではなく、量を作ることで勝負できると思って選びました」

−ちなみに他に検討した品目はあるんですか。

「まず、小ネギです。ただ、これは多くやっている人がいてやめました。あとはきゅうり。こっちは、聞いたら朝晩に穫らなきゃいけないとか、曲がるとダメとか聞いて、やめました。ネギは出来上がったものを一か月二か月置いておけるけど、きゅうりは半日も置いておけない。素人ならではの考え方というか、素人が戦える、日本一になれる品目を探した結果、それがネギでしたね」

−そうして選んだネギで、就農2年目で栽培面積日本一を達成したとのことですが、そこから味を追求する方向に転換したのは何故ですか?「味が分からない」からネギを選んだことと矛盾しているように思えますが・・・。

「面積で日本一になったものの、今後の10年、15年を見据えたときに、このままでは勝てないと思ったので、味の世界を追求することにしました。

 自分は、『味の追求』と『加工品向けの生産』との間には、絶対超えてはいけない一線があると思っています。つまり、『味』の世界にいた人間が『加工品』の世界のドアを開けてしまうと『味』の世界には戻れない、ということです。ちょっと葉が曲がってもいい、とか雑に作ってしまう。

 生産したネギの振り分けはスーパーに出す、自分で売る、加工するなど色々あるけど、加工が一番楽だと思っています。だけど、加工の世界には大手企業が入ってくると思いました。

 そうなると販売単価が下がり、経営体力の勝負になってしまう。それでは勝てない。なので15年後を見通して、『味』の世界を追求することにしました」

−日本一を達成した後も、あくまで勝負、なんですね。

「味が分からない野菜であるネギで日本一を獲って、そのネギを『味が分かる野菜』としてブランド化すれば、みんな自分のところから買う理由がある訳なので、今度はこっちで日本一を獲れるかなと(笑)」

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第2回掲載分【販売単価向上の突破口~ブランディングの秘訣~】

−ちょっと話は変わりまして、販売単価の向上に非常に苦労されたとのことですが、単価向上を目指したきっかけを教えてください。

「農産物の面白いところとして、小売価格が決まっていない訳です。180円で売ろうが200円で売ろうが自由というか、決められていない。だから、味を追求したら単価を上げられると思いました。あと、経営的に言えば、単価が上がれば原価率が下がって、行動効率がすごく良くなる訳で、面白いなと感じて、とにかく単価を上げにいきました」

−具体的にはどんなことをされましたか。

「市場に出さない、味を上げる、そしてブランディングですね。ただ、営業をどれだけ頑張っても、最初、198円を超えられませんでしたね。

 山形では、芋煮の時期になるとネギの値段は下がるんです。クリスマスシーズンに苺が高くなるように、需要が高まれば値段は上がる筈なのに、ネギについては逆に安くなる。これはおかしいということで、今は東京をメインの販路にしています。 

 あと、これも販路の話ですが、物流コストの見極めを行いました。運送が一番安いのはどこかを調べたところ、山形が強いブロックがあるんです。物流が一番安くて高く売れるところに出す、簡単なことだとは思いますが」

−単価向上が上手くいった転換点は何だったんでしょうか。

「仮に年間5万ケースあったとして、5万ケース全体の単価を上げようとすると難しい。そこで、1本1万円のネギや、8本で1万円のネギを作ったんです。そうすると、お客さんは『1万円のは高くて買えない、でもスーパーで同じ人のネギが298円で売ってる、これは買えるじゃない』ということで買ってくれて、5万ケースの単価が上がる。

 そこで、8本1万円のネギを完売するように営業をかけました。テレビに出るとか。その結果として、298円が実現しました」

−その手法にはどうやって気付いたんですか?

「死ぬほど5万ケースを売ろうとしたけど単価が上がらなくて、とにかく考えました。ある日、テレビを見ていて、叶姉妹がネギを作ったら高いだろうなと思ったんです。ここで閃きました。叶姉妹なら、何を作ったって高く売れるだろう、決して安い値段設定をしないだろう、と」

−確かに(笑)。

「自分は『叶姉妹理論』と呼んでますが、さくらんぼを作ったら、100万円でも売れる筈、そういう存在にならなければいけないと思ったのが最初です。それが自分のブランディング。すごく高いものを作っている人が、ちょっと高いものを売れば、お客さんは『(高くても)いいよ』って言ってくれる。でも、そのためには美味しくないとダメだから、味にこだわっています」

−他にブランディングとして気をつけていることはありますか。

「社員にはユニフォームがあるし、社屋のデザインも統一感を持たせています。企業としての統一感は、バイヤーに『きっちりしている会社』という安心感を与え、結果として価格を上げることにつながります。バイヤーさんが怖いのは欠品。きちっとしていれば、この会社は大丈夫と思ってもらえる。そこにお金はかけます。

 県の(令和元年度)ベストアグリ賞で農林水産大臣賞を取れたのも、その成果だと思っています。

 次の目標は、日本一だと言われるような利益を3年以内に出して、さらに上の賞を取ることです。それを目指して更なる完璧な仕組みづくりを頑張っています」

−取組みが着実に成果につながっている感じがしますが、成功の秘訣はあるんでしょうか。

「自分が成功しているとすれば、それは『聞けば簡単だけど、やると難しいこと』を実行しているだけだと思います。聞けば『へー』って言われるくらいのこと、でも実際みんな出来てないことなんじゃないかと思いますね」

−仕組みづくりの部分で、いま関心があるのはどんなことですか。

「デジタル化ですね。例えばUber Eatsは今人気がありますが、サービスの中身としてはただの出前な訳です。それが流行ってるのは、おしゃれさと、GPSで配達員がどこにいるかが分かるのが面白いだけだと思ってます。そういうデジタル化による面白い取組みを今後進めていきたいと思ってます」

−ネギの栽培の部分で手間をかけていることはありますか。

「味です。とにかく味にこだわること。市場には、太さと長さという規格しかありません。だから、味にこだわればブランド化につながります。味にこだわるということは、土にこだわり、肥料と微生物にこだわることになります」

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第3回掲載分【今後の課題~時代に合わせた生産・販売戦略~】 

−今後の課題と感じていることは何ですか。

「今後は少しずつ、オンラインショップも含めて消費者に直接届ける努力をするでしょうね。生産者の思いを、直接的に届ける技術が今からは必要になると思います。でも農業者がまだ弱いし、ネギについてはそもそもネットで買う文化がないんです」

−フルーツはよくオンライン通販サイトで見かけますが、ネギは見たことがありません。

「さくらんぼやラ・フランスは贈答用とかあるけれど、ネギでネット販売をやるのはものすごくリスクがある。消費者が普段ネットで買うようなものでないので、そこをクリアするのにどうしたらいいか、が課題です。

 あるとき調べてもらったら、ある一定の条件を満たさないと、消費者は『購入する』ボタンのクリックをしないんです。それは、ものすごく美味しいすき焼きを作りたいとき。そういうときは、牛肉と卵とネギ・・・と、いいものを買うんです」

−確かに、いいものを作りたいときは、全部の材料にこだわりたくなるかもしれません。

「あと、いま力を入れているのは飲食店。美味しいものを作りたいという飲食店に力を入れています。毎年のように災害が起こっている中で、味の良さより災害への強さを優先した品種を採用する生産者が増えていて、それが飲食店に流れていると感じています。そういう流れがあるからこそ、自分はより美味しいものを作っていかないといけないと思っています」

−本県でも、7月豪雨災害により、農作物を含めて大きな被害がありました。清水さんのネギも被害に遭われたと聞きましたが。

「災害があっても、味を追求するのはやめません。ただ、災害が起こることを想定して、一部のネギの作付体制を変えています。春植えて秋収穫するから災害の影響を受けるので、秋植えて春収穫という作付けに今回から挑戦しています。雪が少なくなっているので、出来ると判断しました。

 時代に応じてやり方を変えていくことは必要です。変われないことは、弱さになりますし、毎年同じことをしようとは全く思わないので、やっていった方がいい、と思います。自分がうまくいけば、みんなやるでしょ?」

−苦労の成果として出来上がったネギに対する思いや自信について教えてください。

「それは人から評価されることだと思っています。自分がどう思っているかより、人から評価されることが重要です。自分がどれだけ『これ美味しいです!』と言うより、テレビ番組でキャスターや芸能人が美味しいと言うのが『美味しい野菜』です。

 自分はワンマンでパワーがあるため自分中心になりがちですが、常に冷静に、自分を客観視しています。自分がやりたいことではなく、やらなくてはいけないことをやる。やらなければいけないことを見つける努力、そしてやらなければいけないことをやりたいことにする努力があるんです」

−やらなければならないこととやりたいこととの間は非常に距離があると思っていて、どうしたらいいんでしょうか。

「性格にもよると思うけどね(笑)。やらなければいけないことを探さないといけないし、それをやりたいことにした人が勝つ。作業と仕事の違いとして、やらなければならないことを探す努力をするのが仕事。社員には『作業ではなく仕事をしなさい』といつも言っています」

−仕事に慣れると効率が上がる一方、課題や改善点に気付きにくくなる部分があると思います。それこそ『作業』になってしまうと言うか。その辺りはどう気を付けていますか。

「確かに『仕事終わらせるモード』では改善点に気付けません。社員には、一週間に一回、自分の仕事とかを全部見て、出来ていないことを確認しろと言っています。今日は悪いところを見つける日、という日を設ける。そうじゃないと、絶対気付けません。

 自分を客観視して、とにかく否定することが大事です。人は、人のことを否定するのだけは一丁前だから。人間としての防御本能があるけど、一週間に一回、防御本能を外せ、と言ってます。その上で、その確認作業を褒める、という風にしています。

 人間、褒められると、やっぱり嬉しいし、褒められたことを正しいと思いこむ。人間がどういう生き物かを考えて社員教育に活かしています」

−社員教育のポイントは何でしょうか。

「仕事を細分化すること。会社の規模が小さければ何でもできないといけないけれど、大きくなったら細分化していかないといけない。スタッフの仕事の分担表を作ってますが、大事なのは、得意じゃないことはさせないことと、新入社員でも責任を持つようなことをさせること。

 まず、野球のイチロー選手も、1番バッターだったからあれだけ成功したのであって、4番バッターをさせられたら、あのような成功をしていなかったと思います。人間、向いている向いていないがある訳で、自分は監督だから、それを自由に変えられる。それが上手くハマると面白いんです。

 そして、トイレ掃除でもいいから、新入社員でも責任をもたせるような組織づくりをしています。何となくで仕事してんじゃねぇよ、ということです。これが出来なければ、何となく仕事に来て帰るような人が増える」

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第4回掲載分【農業の魅力~うまくいかないからやりがいがある~】

−仕事を自分ごとにしないといけないということですね。次に伺いたいのは、農業をやっていて、やりがいを感じる瞬間、です。

「うまくいかないとき。うまくいかないから、農業はやめられないです」

−普通は逆ですよね?

「何年経ってもうまくいった、ってあまり思わないです。確かに、最初の頃は、『よくできた』って思う。でも、レベル上がってくると、『これって別によくねぇな』となる。どんなもの作っても、うまくいかない、って感じてしまうと言うか。

 楽しいというのは一時の感情で、言ってしまえば草野球レベルってことです。メジャーリーグレベルになれば、農業は苦しくなる。何年経ってもうまくいかないから頑張り続けて、それがいずれ快感に変わってくる(笑)」

−うまくいかないことを楽しめる、というのは正直イメージが難しいです・・・。

「必ず後悔を残して死ぬ、というのが農業者のあり方だと思うんです。『悔いを残さずに死ぬ』って言うけど、それは突き詰めていないということ。悔いを残して死んだら、生まれ変わってもまた農業やるでしょ?『くっそ、あれもできていなかった』と思いながら死ぬんですよ。結構、自分の場合は、考えてやっているんです。やっている人じゃないと分からない部分なのかもしれませんが・・・」

−日々、改善を目指して取り組んでいるからこその境地と言うか価値観だと思いました。続いて、世間一般の農業に対する興味・関心を高めていくためにはどういうことが必要と思いますか。

「うーん。例えば、目の前にあるこの机について、机を作って売っている業者さんに興味・関心を持っているかというと、そうではないでしょ?野菜だって一緒。だから、世間に対して感謝しろとか関心を持ってほしいとか、自分は思わないですね。

 それより大事なことは、農業者が仕事として成功していくことが一番。自分もサラリーマンやっていましたが、みんな仕事に文句があるじゃないですか(笑)。そこで、『自分らしく、農業、自然で、結構儲かるらしいよ』と聞けば、やると思う。『楽しく、夫婦で年収1000万ぐらい稼いでるよね』となれば、『えっ』となるよね。業態として成功している、そういう姿を見せていくのが、農業の担い手確保のためには必要だと思います」

−そのためには、農産物の販路拡大が重要かと思います。山形の農林水産物を県外・海外に届けるために必要なことは何でしょうか。

「海外は今やめたので分からないですが、県外向けに頑張るに当たり、物流の確保と出荷量の設定が大事だと思ってます。農産物は、豊作凶作や災害の影響とかで供給量が大きく変わりやすく、それが販売価格に直結してしまう。

 ネギではない品目の話ですが、以前災害があった年に供給不足となり、市場で値段が上がった作物を翌年みんなが植えて、供給過剰で値段がつかなかったことがあります。そんな風に、リスクが大きいんです。

 そういうことを考えて、自分が山形の農産物のブランディング戦略を作るんだったら、例えばさくらんぼは各県に何キロしか卸さない、と決めますね。そうしたうえで、東京や他の県に物流を組んで営業をかけていく。

 他には、県内で生産者が多い農産物について、それが、他県で何%消費されているか把握して、消費量が少ないところに営業をかける。『うちのも卸すけど、あなたのとこのも買うから』っていう風にね」

−販売チャネルの確保は不可欠ということですね。

「作ったものを県内で全部消費しなければいけないということではないですよね。生産者としては、高い単価で売れればいい。地元で売った結果として安くなってしまうのなら、何のための地産地消か分からなくなってしまうかな、と」

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第5回掲載分【今後の展望と、就農を考える方にメッセージ】

−次に、今後の展望を教えてください。

「ネギの栽培面積は今から減らしていきます。減らして、売上を同じにする努力をするつもりです。販売単価を上げたり、10アールあたりの収穫量を上げたりする方法ですね。

 気候が変わってきているので、今まで出なかったような病気が出ています。ただ、病気に関しては、何とかしようという考えがないんです」

−どういうことでしょうか?

「病気と戦わない、という戦い方をするんです。例えば3箇所の畑を用意して、毎年1箇所で栽培して、1回使ったら2年間休ませるというやり方。同じところでやり続けるから、病気になるんです。

 栽培以外の展望としては、いいネギつくるには、いい苗を使わないといけない。なので、いい苗を売りますよ、と言うことで苗ビジネスも頑張っていきます。加工品に関しては、出来るだけしたくないかな(笑)」

−著書(※)には、加工品で大手企業と戦っても勝てない、とはっきり書かれていました。

「そうです。だけど、勝てるポイントはあると思います。戦う場所をちゃんと選ぶこと。例えばネットとか、あとは大手はメジャーだから、例えば東京駅のお弁当としてはあまり選ばれないかも、とか。そんな風に、大手にも勝てるような場所を探せばいい、というだけです。

 逆に、そうでもしなければ絶対勝てない。大手企業は人もお金も相当かけてやっている。農家が規格外をちょっと加工して餃子を作りました、で勝てるような甘いものではない。そういう『ライオン』のいない場所を探すしかないと思います」

「なぜネギ1本が1万円で売れるのか?」講談社+α新書

−山形全体の展望として、山形の農林水産業が元気になるためには何が必要だと思いますか。

「僕の強みは、やっていることは言えること。だからやっていないことは無責任には言えない(笑)。そのうえでだけど、販売と物流には力を入れないといけない。さっきの物流の話みたいに、47都道府県の物流コストとかを確認したうえで、販売強化していくことが必要だと思います」

−それでは、山形での就農を考えている方に一言お願いします。

「そういうのは、夫婦でやってて成功した人に聞いた方がいいと思う(笑)。『夫婦で楽しい時間を過ごしませんか』、とか。自分が言うと、『そんなに甘くないよ』と言っちゃうから。『5000万とか1億を投資するのでそんな簡単じゃないよ』ということなんですけど。うーん、無責任には言えないので、ちょっと考えます。

 (一分間ほど考えて)・・・『作ることだけが農業ではない』、ということですね。作るだけの知識ではなく、経営の知識もちゃんと学ぶことが必要。農業者ではなく農業経営者だということをちゃんと理解したうえでやってください、と思ってます。あくまでも僕の考えですけどね」

−経営の知識は不可欠、と。

「自分からしたら、『銀行からお金を借りるのが上手になってからやった方がいいですよ』と言いますよ。結局、資金繰りが経営者の仕事ですから。あとは人を育てて回していくこともそうですけど。

 まぁ、営農の規模や品目によって変わってくる話なので、2、3人でやろうという人には参考にならないと思います。バッターも打順でやり方が違うのと同じですね」

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未公開分【所定のインタビュー項目以外のこともお訊きしました!】

−ここからは、所定の項目以外のことをお聞きしていきます。基本的なことと言うか、「初代葱師」を名乗っておられますが、二代目はおられるんですか?

「あれは役職のようなもの。自分の仕事に誇りを持つためにつけたんです。今、宮城や千葉など3箇所でネギの作り方を教えていて、全国で葱師と呼ばれるものは作っていこうと思っています。簡単に言うと、寅ちゃんねぎのフランチャイズ。寅ちゃんねぎを全国で作り、買い取って、売ってあげる方式ですね」

−10年後、20年後を見据えたときの会社、後継者についてどうお考えですか。

「今のところは後継者は作らず、自分の代で終わらせるつもりです。継ぐのも嫌だし、継がせるのも嫌。人から貰ったものなんて意味ないし、嫌でしょ。

 事業を会社に売るのならいいですよ。そうじゃなく、のほほんとして普通に来て、二代目、なんて嫌でしょ。自分がそういう気持ちなんで、会社を継いだ人も面白くないだろうし」

−会社でいま取り組んでいることを教えてください。

「いま面白いと思っているのは、雇用形態です。明日から一週間雨だと分かれば、一日

100人雇うとその日に作業が終わる。(SNSアプリの)LINEで公式の募集アカウントを作っていて、明日10数人、早いもの勝ち、とか募集をかけてます」

−LINEで募集ですか。

「天気の影響とかで、人手が急遽必要なときって農業に多いんです。それと、必要な人手の人数のアップダウンが激しい。それを、平準化するか、または激しくなったときに対応できるか、の仕組みづくりは絶対に必要です。

 募集するときは、例えば毎週火曜・金曜の2日、何時から何時まで勤務とか、勤務条件は明確にしてます。『何食べたい?』に対して『何でもいい』が困るように、『月〜金のうちで働ける人』じゃダメでしょ。ちゃんと決めて出してます」

−確かに、具体的に条件を書けば、見た人の反応は「働ける」「無理」しかないですね。

「あとは短時間勤務で帰らせること。そしたら喧嘩も起きない。人間、8時間も一緒にいたら揉めるので、揉めない間に帰します。あとは、勤務時間帯がちょっとずつズレているので、帰る時間もズレる。人間、近寄らなければ大して喧嘩にならない。揉めるのは動物的本能なんですよ。揉める時間帯も大体ある。10,12,15,17時。それを逆手に取って、あんまり人を同じ時間帯にいさせない。毎日いると嫌でしょう?

 あとは皮むき作業について、今年は午前中に絶対終わらせていて、昼以降は一日もしていません。格好いいでしょ、一日もだよ?目標を立てて、社員みんなでそれを達成する仕組みを作っています」

−人間の心理などを考慮してスタッフを動かしていると改めて思いましたが、人を育てるのに気を付けていることを教えてください。

「人を育てるとかについては、『習慣を変える』、これだけです。部下に『なんでできないんだ』って言う人がいますけど、そんなの1万回言われたって人は出来るようになりません。

 人を教えているときにイライラする原因は、自分の常識と他人の常識が違うから。だから、言い方とか言葉にはとても気をつけています。

 で、何をしたらいいかと言えば、『習慣を変えるしかない』という結論に達しています。ルーティンを決めて、それを守らせるということですね」

−「人を育てる」とか「人材育成」って、責任を感じる言葉というか、重たく感じてしまって・・・。

「人が育つとか成長するっていうことと、習慣を作ることは同じです。新入社員に『人を育てろ』と言ってもできない。そうじゃなく『スタッフの習慣だけ変えさせて』と言うとできる。習慣化すること、それを別名、成長という。人材育成みたいな名目によらず、結果的に成長している、という形にしたいですね」

−習慣づけの際に工夫されてることはありますか。

「ワンランク下の言葉で言うと、分かりやすくなると思っています。抽象的な言葉を使わずに、成長させる。『何でできないの』なんて、できない人が言う言葉なんです。出来るだけ具体的に、分かりやすく示すのが大事です」

−やらなきゃいけないことのイメージがすぐ分かりますね。

「ただ、敢えて抽象的な言葉で言うときはあります。それは幹部職員に自分で考えさせたいとき。幹部は、これまでの経験や実績があってそれだけの地位にいる訳だから、自分を超えることを考えている可能性もあります。自分の考えよりいいものを出してきたら、悔しいけどそれを採用します(笑)」

−他に教育方針などはありますか。

「『任せておいて文句を言う』ですね」

−・・・任せておいて文句は言わない、ではなく?

「言う(笑)。スタッフに任せてみて、持ってきたものを見て文句を言う。それは、プレーヤーの立場としての、『俺ならここまで出来るぞ』って文句です。スタッフの仕事を見て自分が何も言えないのでは、社長としての尊敬が集められない。ただ、スタッフだって文句を言われたくないから一生懸命やってくれます」

−先程の幹部に考えさせる話もそうでしたが、結構ぶつかり合うんですね。

「農業以外の分野から入ってきたスタッフには、色々な知識を持っていたりするので、結構負けちゃうことがあります。『なるほどな』ってなってしまって。でもそうならないようにこっちも真剣に考える。それが楽しい。

 『ちょっと考えさせて』って言って一日必死に考えて次の日に文句を言ったり、勝てなくて社員が喜んだり。日々真剣勝負ですね(笑)」

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 清水さんの熱の入ったお話に圧倒されつつ、つい農業以外の話も聞いてしまうなど、あっという間にインタビュー時間が過ぎてしまいました。お話を伺い、ネギに対するこだわりとともに、経営者としての明確なビジョンや責任を持って日々チャレンジされていることを感じました。

 今後も、山形の農林水産業に従事する方に、その魅力ややりがいをお聞きしていきますので、ぜひご期待ください!

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