更新日:2020年9月28日

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松本友哉さん(酒田市)

いま、山形から・・・ いま、山形の人 自然体で暮らし、不思議の島をデザインする! 松本友哉さん(酒田市)(JPG:109KB)

(平成28年8月5日掲載)

前号に引き続いて新シリーズスタート。県外から山形県内に来て活躍している方。一度山形を出て戻ってきた方。そんな「いま、山形の人」な方々の活動を紹介しながら、彼ら・彼女らが惹きつけられた山形の魅力を再認識し、お伝えしていきます。

シリーズ最初の舞台は、酒田港から北西39kmに浮かぶ飛島。山形県には人が200人ほども住む島があるんですよ。北と南の動植物が混在する、豊かな自然を目当てに、釣りやバードウォッチング、ウォーキングなど全国から多くの観光客が訪れ、夏は海水浴や磯遊びで賑わいます。この島に移り住んだのが山口県出身の松本友哉さんです。

日本海に浮かぶ不思議な島

飛島は酒田港から最新型双胴船の定期船で1時間15分。山形県で最も北西に位置していますが、周囲に暖流が流れているため県内で最も温暖で、平均気温は12℃以上。積雪も多いときで10cmほどと多くありません。この温暖な気候が、面積2.7k平方メートルいう小さな島に独自の環境をつくりあげています。

飛島(JPG:59KB)

独特の海岸線を持つ飛島。鳥海山の山頂が噴火によって吹き飛んで島になったという伝説があります。

トビシマカンゾウ(JPG:92KB)

海岸近くや断崖など日当たりのよい場所に群生するトビシマカンゾウ

タブノキやヒサカキなどの常緑広葉樹と、ムベやヤブミョウガなどの暖地系植物、オオイタドリ、オオバナノミミナグサなどの寒地系植物が混生し、海岸近くにはオニユリが咲き、固有種であるトビシマカンゾウが黄色い群落をつくります。

海では、暖流に乗ってやってくるスルメイカやトビウオなどの他、メバル、サザエなどの漁が行われ、島内の防波堤や岩場ではアイナメやアジが釣れ、船釣りでは大型のマダイ、クロダイが狙えるため、全国から太公望が訪れます。

オオルリ(JPG:92KB)

青い鳥を見つけると幸せになれる?4月下旬~5月上旬に見られるオオルリ

トビウオ(JPG:96KB)

トビウオは飛島の特産品。焼き干しになります。

渡り鳥の中継地としても知られ、春と秋は300種類以上の渡り鳥が飛島で羽を休めます。日本では本来見ることができないロシア、中国、中央アジア、ヨーロッパ、アラスカなどからの珍鳥や迷い鳥が見られることから、バードウォッチングには絶好のポイントなのです。

本土からは決して見ることのできない、鳥海山方向から昇る朝日。日本の渚百選に選ばれた荒崎海岸からは水平線まで茜色に染めながら、御積島(おしゃくじま)・烏帽子群島(えぼしぐんとう)の方向に沈む夕日を見ることができ、時が経つのを忘れてしまいます。1000万年以上の大昔、飛島が海底であったことがわかる高さ20mほどのゴドロ浜の崖、丸い石だけでできた美しい海岸・賽(さい)の河原など、大地の営みを体感できるのも魅力です。

飛島の朝焼け(JPG:52KB)

飛島の朝焼け。右手が鳥海山

歴史の面でも、約6000年から4000年前の縄文時代の遺跡や平家落人伝説、はたまた海岸に連なる奇岩や地名、島内の神社にまつわる多くの伝説が残されているなど、たくさんの不思議に包まれた島なのです。

緑のふるさと協力隊として、いざ飛島へ

島の住民は200人ほどで、漁業を中心に、民宿などの観光業が営まれています。島内には公共交通機関はなく、タクシーもありません。コンビニエンスストアやスーパーもなく、食料品などは定期船に乗り、買物に行かなければなりません。

合同会社とびしまのスタッフ(JPG:141KB)

松本さんと合同会社とびしまのスタッフ

2012年にこの飛島へ移住してきたのが、松本友哉さんです。松本さんは大阪の大学でデザインを専攻。卒業後はどこかの地域に住みながら、その土地ならではのデザインを創造したいと、地方への移住を模索していました。そんなとき、全国の農山村に若者が派遣され、1年間滞在して地域の様々な体験をする「緑のふるさと協力隊」の制度を知り自分を追い込むためにも離島へ行きたいと、第一希望の飛島へやってきました。

「いろいろ考え始めると心配事は尽きないと思い、先のことをあまり想像しないようにして島に渡りました。漁業や草刈りなど、島の仕事はなんでも手伝い、島の暮らしに戸惑いは感じなかったのですが、ただひとつだけ困ったのは言葉(方言)が全くわからなかったこと。一生懸命に聞き取ろうとしても、一言もわからない!島の人が気さくに話しかけてくれましたが、コミュニケーションがとれない。まるで外国にいるようでした(笑)。とりあえず『イカ』や『ワカメ』など、聞き取れる言葉があると復唱し、乗り切っていました(笑)。『緑のふるさと協力隊』の1年間はあっという間に過ぎ去り、活動期間が終了しても、飛島についてまだ知らないことがある。デザインについても実績が残せていない。もう少し住んでみようという気持ちになりました。そしてふと気がつけば島生活ももう5年目。現在は飛島の言葉はほとんどわかるようになりました」と松本さんはうれしそうに語ります。

春のおまつり(JPG:124KB)

法木地区の春のおまつり。天狗舞の大役を任せられた松本さん。

ともにあゆむ仲間たち

2013年、UIターンの若者たちの受け入れができるようにと「合同会社とびしま」が設立され、松本さんも立ち上げ当初から参画しています。現在は合計7名が「とびしま」で離島ならではの様々な活動に取り組んでいます。

飛島クリーンアップ作戦(JPG:101KB)

リピーターがいる程の人気イベント、飛島クリーンアップ作戦

飛島は外洋から多くの漂着物が流れつくため、定期的かつ大がかりな清掃活動が欠かせません。合同会社とびしまでは、毎年5月に島外から多くのボランティアを招いて行う「飛島クリーンアップ作戦」に参加、協力しています。他に年に数回行う島内の公道の草刈り、飛島の特産品・ゴドイモ(男爵いも)の栽培、観光客を案内する「とびしまコンシェルジュ」、依頼があれば漁業の手伝いなども行います。

また、飲食店の運営も行っており、「島のスペースしまかへ」は観光客と島民の交流拠点となっており、島内のマリンプラザ2階の「島の駅とびしま」では飲食提供・土産販売・観光ガイドなどのサービスを行っています。昨年秋からは酒田市内で「島の炭火焼きカフェ&バル 炭かへ」を開店し、飛島の海産物を炭火焼きで提供しています。

さらに、島内に整備した加工所でのオリジナル商品の開発・製造・販売、加えて、ゼロ次産業と位置付けて、風景保存や継承のため聞き書きや映像記録を行うなど、活動は幅広く、飛島の生活に深く根ざしているのも特徴です。

松本さんがデザインした島の駅のロゴ(JPG:75KB)

松本さんがデザインした島の駅のロゴ

決意…飛島をデザインで活性化

合同会社とびしまでの松本さんは、観光ガイドなどを行いながら、ロゴマークや商品開発からパッケージまでのプロダクトデザインを行っています。

最近では船舶免許を取り、船主から8人乗りのモーターボートの船長を任されました。7月からは、小型遊覧船「とびうお」と名付けたモーターボートで、ウミネコの繁殖地である御積島への遊覧や、夕日ウォッチング、ダイビング向けチャーターなどの営業を始めました。「飛島のことはだいたいわかったようなつもりでいましたが、波に対してどう進むのか、どこに暗礁があるのかなど、知らないことばかりだから、もっともっと海や船、漁のことにのめり込んでいきたい。今夏、ますます日焼けが進みそうです」と松本さんは意気込みを語ります。

遊覧船「とびうお」(JPG:77KB)

遊覧船「とびうお」

松本さん制作の「しまかへ」のロゴ(JPG:62KB)

松本さん制作の「しまかへ」のロゴ

いまでこそ島での様々な仕事に精力的に取り組む松本さんですが、大学卒業後の就職活動の時期にはなかなか就職する気になれず、田舎に憧れ、農山村に1カ月間滞在したといいます。その滞在中に田舎で活躍するデザイナーになることを決意したのです。

「インターネットとパソコンがあれば、どこにいてもデザインはできるのかもしれません。ただ僕は、デザインとは関係ないと思われても島で暮らし、いろんな仕事をして、島に暮らす人たちと同じ責任を背負って、感じたものを形にしたいのです。そして出来たものが、島の魅力を発信していなければなりません」

松本さんが「地域そのものをデザインで活性化する」という強い使命感を持ち、飛島へ渡ったことがわかる言葉です。

松本さんに飛島の魅力を伺いました。

「島では財布が必要ないんです。自分の財布がどこにいったかわからなくなるんです。」という松本さん。

「ここにはコンビニや飲食店がありませんから、1日3食を自分たちで作らなければなりません。しかし食事どきになればどこの家からも、『一緒にくってげやー』と声を掛けてもらえます。ご飯を食べるところが『家』だとすれば、ここにはたくさん家族がいるのと同じ。島の人みんなが家族のようなものなんですよ。船を操縦したり、お祭りで舞を踊っていたり、思いもしていなかった体験ができているのもうれしいですね」と笑顔で答えてくれました。

とびしまのオリジナルアイス(JPG:69KB)

とびしまのオリジナルアイス

飛島は、日帰り旅行もいいのですが、1泊か2泊できたら、豊かな自然と、ゆったり流れる時間と、そして島の人たちとのふれあいが、日常の喧噪のなかで凝り固まってしまった心をゆっくりとときほぐしてくれるでしょう。

まばゆいばかりの海のシーズンを迎え、しばし、こんな離島生活へ「タイムトリップ」してみませんか。

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