更新日:2020年9月28日

ここから本文です。

最上川美術館(真下慶治記念美術館)

いま、山形から・・・ 山形漫歩 洋画家が愛した風景とともに 最上川美術館(真下慶治記念美術館)(村山市)(JPG:94KB)

(平成28年2月19日掲載)

山形県の母なる川「最上川」の景勝を生涯にわたり描き続けた、洋画家 真下慶治(ましもけいじ)氏。その作品の数々は、最上川の三難所のひとつ、村山市大淀(おおよど)の大蛇行部を眼下に望む「最上川美術館(真下慶治記念美術館)」に展示されています。

洋画家 真下慶治氏

真下慶治氏は、大正3(1914)年に山形県最上郡戸沢村に生まれました。17歳から絵を描き始め、平成5(1993)年に白血病でこの世を去るまで、2000点近くの作品を残しています。

真下慶治氏(JPG:99KB)

最上川を描く、ありし日の真下慶治氏。

「真下は数多くの作品を残しましたが、その中でも最上川、特に冬の最上川を好んで描いていました。日本美術展覧会(通称:日展)などに出品した大作のほとんどは、冬の最上川を題材にしています」と教えてくださったのは、真下慶治氏の奥様で、最上川美術館(真下慶治記念美術館)館長の真下清美さんです。「真下の目には、白い雪景色の中を流れる黒い最上川が、どの季節よりも印象的に映っていたのではないかと思います。新緑や紅葉など色彩が豊かな季節は、どうしても川と景色が同化してしまいますよね。冬は川の流れそのものが際立って、より鮮明に描くことができたのではないでしょうか」。

真下清美さん(JPG:59KB)

館長の真下清美さん。

また、真下氏は現場で描くことにこだわっていたと言います。「『下書きだけを現場で』ということはなく、必ずキャンバスを持って行き、雪の吹きすさぶ厳寒の中でも長い時間をかけて描き上げていました。まるで、川や風の音までをも、キャンバスに描いているかのようでしたね」。

景観・地域と共存する美術館

最上川美術館(JPG:107KB)

最上川美術館(真下慶治記念美術館)は、平成24年に第13回公共建築賞優秀賞を受賞しました。

最上川美術館(真下慶治記念美術館)は、平成16(2004)年に村山市市制50周年を記念し、村山市大淀の小高い丘の上に建てられました。村山市出身の建築家 高宮眞介(たかみやしんすけ)氏により設計された建物は、地元の杉材や楯山石(たてやまいし)が使われ、周囲の景観とも見事に調和しています。

「ここは、大淀尋常小学校があった場所なのですが、設計者の高宮さんが、『元々あった木は1本も切りたくない』とおっしゃって、旧校の桜並木をそのまま残しこの美術館を建ててくださいました。入り口にある桜の木は、樹齢100年は超えているのではないでしょうか。春になると満開の桜を楽しむことができます。また、この美術館からは、真下が昭和46年に最上川沿いに建てたアトリエも見えるのですよ」と清美さん。アトリエの目印は、赤い色の屋根です。

企画展示室(JPG:96KB)

木のぬくもり溢れる企画展示室。企画展のテーマは様々で、平成28年2月26日からは雛人形展が行われます。

芋煮会(JPG:145KB)

テラスで行われる芋煮会は、秋の恒例行事。毎年、多くの人で賑わいます。

木の香りに包まれた館内、最上川の大蛇行部を眺望できるラウンジ、大淀地区を一望できるテラス…。地域に根差した美術館は、絵画を鑑賞するためだけではなく、結婚式やコンサート、絵画教室、芋煮会など様々な用途にも利用されています。柔らかな日の光が差し込む温かな空間は、真下氏の作品や最上川の魅力に触れる場だけにとどまらず、地元住民の交流の場としても愛されているのです。

四季折々の魅力を楽しむ

美術館では、収蔵されている200点の作品の中から、季節やテーマにあわせた作品を展示しています。「常設展示室には、最上川を描いた大きな作品を常時15~20点ほど展示しており、いつでも真下が好んで描いた冬の最上川をご覧いただけます。また、四季の最上川の姿を楽しんでもらえるように、年に数回、作品の入れ替えも行っています。小さな作品はテーマを決めて、企画展として展示しています」。

常設展示室(JPG:60KB)

常設展示室では、冬の最上川を描いた大作を中心に、季節にあわせた作品を展示しています。

雪の最上川(JPG:78KB)

ラウンジから望む、雪の最上川。

さらに、この美術館では目の前に広がる景色も展示品のひとつだと清美さんは言います。満開の桜、爽やかな風に揺れる新緑、色彩豊かな紅葉、真っ白に降り積もる雪など、移りゆく季節が、四季折々の魅力で最上川を演出してくれます。真下氏はかつて「最上川を描き続けて飽きないのか」という質問に、「自然は移ろい、動くもの。同じ景色を描いても、同じ絵ということはない」と答えたそうです。

「この絶景を目にした方の多くが、他の季節の景色も見てみたいと、その後も足を運んでくださっています。カメラを片手に訪れる方も多いですし、テラスでスケッチをさせてくださいとお願いされることもあります」。

やまがた景観物語(JPG:83KB)

「やまがた景観物語」おすすめビューポイント33の1つにも選ばれています。

大淀の眺め(JPG:88KB)

真下氏の代表作「大淀の眺め」(昭和48(1973)年制作)と同じ光景が広がります。左下の赤い屋根がアトリエです。

一つひとつの作品に描かれた情景に思いを馳せながら、最上川の悠々とした流れをただ静かに眺められる美術館、最上川に魅了され続けた“真下慶治の世界”へ、ぜひお出掛けください。

取材協力・お問い合わせ